【熊被害の急増で思い出したこと】
2025-12-31

2025年も大晦日を迎えました。
今年は熊の出没が相次ぎ、犠牲者が多く出たのが印象的な年になりました。
熊の出没が全国的に増加したと各自治体が注意喚起を強めたのが4月頃からで、私は8月初旬に白神山地に行くため秋田・青森に行く予定だったこともあり、熊よけ用の鈴を購入して持参しました。
秋田で宿泊した現地の人に熊の出没について聞いたところ、「この辺で熊が出るというのは聞いたことはないですよ」と言っていたので安心したのですが、山地を歩いている時に偶然にもマタギ(熊猟師)の人に出会ったので、熊のことについて聞いたところ、時々出るから気を付けた方がいいよとは言っていましたが、今のような危機感や緊迫感はありませんでした。
ところが、その後の8月14日に北海道・知床半島の羅臼岳を歩いていた登山者がヒグマに襲われ死亡した事故が全国的に報道され、その後9~11月には毎日のように熊の民家への出没や熊による怪我や死亡が報道され続け、秋田では市内の民家でも熊が出没して安心して外を歩けないとの市民の声が報道されました。私が秋田に行った8月初旬の時とは状況が一変したのが驚きでした。
今年熊の出没が急増した原因は、熊の主食であるどんぐり類の大不作や温暖化により冬眠期間が短くなったこと、狩猟者の高齢化・減少により熊の数が増加したことなど複数の要因が重なったと言われています。
12月のラジオ番組で、アルピニストの野口健さんが青森のマタギの人から聞いた話を紹介していましたが、熊の出没急増の要因の一つに熊猟文化(マタギ猟)の減少が熊の個体調整機会を減らしたことを述べていました。
この話を聞いた時に私が思い出したのは、初めて社会人として会社に入社して配属された部門のヘッドが医師でがん研究の専門家だったのですが、その上司が私に話してくれた内容でした。
それは、実験用の寒天培地のシャーレに細胞を加えると、正常細胞の場合は綺麗に一層になって増殖し、シャーレの端でピタっと増殖が止まって、そのまま長く生き続けるそうですが、がん細胞の場合は増殖を止める機能がなく何層にも盛り上がって増殖し続け、栄養不足やがん細胞自身の排泄物ですぐに死滅してしまう、という話でした。
このお話は、私にとっては忘れられないインパクトのある話で、実験用のシャーレを地球に例えれば、人類が調整機能を失って繁栄し続ければ、食料不足や人が生み出した排泄物(大気汚染、CO2)などで消滅するリスクを抱えていると気づかせてくれました。
地球という限られた資源の中で生存を継続し続けるために、人類だけの繁栄を考えていたのではがん細胞と同じで、いつかは滅びる可能性が高く、地球の資源や熊などの動物や森林・植物などの生物との共存を考えた調整機能を持ち続けることが大切なのだということを、改めて考えさせられた年でした。
来年も良い年であることを祈念いたしております。
