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【小澤征爾さんを失って】

2024-02-15

指揮者の小澤征爾さんが2024年2月6日に88歳で亡くなられました。

その後、世界中の様々な団体や個人から、小澤征爾さんを悼むコメントが発表されています。

これらのコメントから、小澤征爾さんが多くの人々に愛された理由は、指揮者として高く評価されているだけではなく、親しみやすく控えめで誠実かつユーモアに満ちた人柄がその根底にあるのではないかと感じています。

作家の村上春樹さんは、「小澤征爾さんを失って」という記事を朝日新聞に寄稿され、2月11日の朝刊に掲載されました。

この寄稿文には、二人の間のエピソードが紹介されているのですが、小澤征爾さんの人柄がにじみ出たものでした。

例えば、ジュネーヴで学生オーケストラを指揮した後に意識を失って倒れてしまい、とても心配したようですが、しばらくして意識が戻り、「指揮する前に、腹が減ったので、つい赤飯をぺろっと食べちゃったんだよね」「きっとそれがいけなかったんだな」と告白したようです。

当時、小澤征爾さんはがんの手術で食道の一部を切除したばかりで、医師からは重いものは食べてはいけないと厳しい指示を受けていたようです。

「すごくおいしそうだったから」と赤飯をぱくぱく食べて、そのまま舞台に立って指揮してしまうという、音楽的な成熟とは対照的に子供がそのまま大きくなってしまったような部分がこの人にはあった」と述べています。

また、ホノルルのカピオラニ公園を散歩していたら、前から小澤征爾さんが大きな北京ダックを2個両手で抱えて歩いてきたので、「それどうしたんですか」と尋ねたら「北京ダックが急に食べたくなって電話で注文したら、手違いで2個買うことになったんだよ」「しょうがないから一人で食べちゃうよ、ははは」ということだったようで、ジュネーヴの二の舞になるんじゃないかと不安だったが、無事だったようです。

人は年をとると頑固になったり、過去の栄光を自慢したり、説教じみてきたりする人が多いと言われていますが、魅力的な年配者の方々は、一つの道に長けているにもかかわらず、それを自慢することもなく、お茶目で子供じみた性格を持ち合わせている方が多いように思います。

私は小さい頃から、将来は「子供のままお年寄りになりたい」という願望を持ち続けてきたので、この村上春樹さんの寄稿文を読んで、益々、小澤征爾さんが素敵に思えてきました。

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