【和田秀樹氏の幸齢党】
2025-09-15
累計53万部を突破した「80歳の壁」の著者で精神科医の和田秀樹氏は、長年「高齢者の心と生活」に関わってきた経験から「幸齢党」を立ち上げ、この党を立ち上げた理由についてYouTubeチャネルで説明をしていました。
幸齢とは、「高齢」を「幸せに齢を重ねる」と前向きに捉え直した造語で、和田氏は「お金的な幸せより元気で若々しくいられる」という幸せを一番の基本に考え、特に高齢者の薬漬け医療をなんとか改善したいという思いを最も訴えていきたいと話していました。
年をとればとるほど薬の害が出やすいにもかかわらず、年をとればとるほど沢山の薬が出されているというのが日本の実情で、そのような変な実情を何とかしたという思いを強く待っているということです。
日本は世界有数の高齢化社会に突入し、今後も益々高齢化が進む中で、国の社会保障費の増大が大きな課題になっています。高齢者への医療費負担が軽減すれば、現役世代の税負担や健康保険料の軽減にもつながりますので、高齢者の薬漬け医療の改善は大きな課題で、この問題を解決するためには政治的な活動が不可欠と判断し、党の結成を決断したのだと思います。
私は長い間、製薬企業で仕事をしてきた経験から、薬はできるだけ飲まない方が体に良いと思ってきたので、高齢者への薬剤投与を減らせれば、高齢者の健康にも日本の医療財政にも良いと思っており、和田氏の考え方とまったく一致しています。
TBSの日曜劇場で7月から放送された「19番目のカルテ」という番組が先週終了しましたが、和田氏はこの番組についても触れていて、臓器別専門医との対決や出し過ぎる薬を減らすというシーンはなく、スポンサーへの忖度があったのではないかとコメントしていました。
私も、この番組には総合診療というこれから求められる医療がもう少し深堀りされ、専門性を追求し過ぎた現在の医療による弊害が見直され、人間を過去の歴史も含めて総合的に捉えた診断や治療をしていく総合診療医が組織別専門医との間で、良い意味での対決がドラマ化されていると思っていたのですが、確かにそのような対決シーンはなく、組織別専門医と協調していくシーンばかりでしたので、物足りない印象で終わってしまいました。
両分野の対決シーンを盛り込めばドラマとしても面白いし、現在の医療の在り方に一石を投じることもできたかもしれません。そして、その反響によって医療行政も変わっていくことが期待できるとは思ったのですが、医学専門医の集団からは非難されることは必至なので、番組もその反発を恐れて忖度が働いたのかも知れません。
先のコラムでも、私は薬の限界と現在の医療の限界を感じている一人として、この番組には期待をしていると述べたのですが、その点でも幸齢党を立ち上げた和田氏と同様に残念ではありました。